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システム受託開発における民法改正への対応

 2020年4月1日に民法が改正されました。実に120年ぶりの改正となるようですね。この改正により、瑕疵担保責任という概念が消失し、その代わりに契約不適合責任という概念が導入されました。

 我々ベンダ企業でも、システムの開発や構築を請負契約を結ぶ際には、必ず基本契約に瑕疵担保責任についての条文を盛り込んでいましたが、今後は契約不適合に対応した条文に変更する必要があります。具体的にどのように変更を行うかについて、考え方の一例をこの記事にまとめました。

瑕疵と契約不適合の違い

 瑕疵と契約不適合ですが、結論から言えばほとんど変わらないと考えられます。まず、瑕疵と契約不適合の言葉上の意味で考えると「瑕疵」には落ち度や不具合といった意味があるのに対して、契約不適合は文字通り、契約に適合しない場合を指します。厳密には違うのですが、実運用で考えた場合は、瑕疵対応の責任が発生するのは不具合の中でも契約や仕様に反しているものが主ですので、そのまま契約不適合と読み替えても不都合は生じないと考えられます。

報酬減額請求権について

 改正後民法では、ユーザ企業は契約不適合を原因とする債務不履行に対して減額請求を行うことが出来るようになりました。これを明示的に基本契約の条文とするかは判断が分かれるところです。というのも、減額する場合は減額のための基準が必要となるのですが、その基準がシステムにおいては明確化しづらいからです。例えば、単純に1機能、1画面が未実装であるといった話であれば工数割合で出せるかもしれませんが、非機能要件であるレスポンスタイムの未達に対する減額割合などは、ロジカルに説明しづらいですよね。ですので、報酬減額請求権については基本契約に盛り込まず、民法の規定に従うといった考え方も選択肢に入りそうです。

契約不適合責任の期間制限

 改正前の民法であれば、基本契約に明文化されていない場合の瑕疵担保期間は民法に従って1年となっていましたが、改正後はユーザ企業が「契約不適合の事実を認識した日」から起算して契約不適合責任の履行を求めることが可能です。この変更をそのまま受け入れた場合、保守費用(瑕疵対応のための体制維持費)の考え方や、ユーザ企業による受入テストの存在意義などシステム受託開発に対して様々な影響が出ます。

 よって、契約不適合の期間について「契約不適合責任の期間は、納品後1年以内とする」など、改正前の民法の規定に近いものにしたいのであれば「なぜ民法の規定と違うのか?」という質問に対して、自社の保守費用、体制維持費、受け入れ試験についての考え方を理路整然と説明できる状態にしておくべきと考えます。その上で、民法の規定に寄せる形で条文の変更を求められた場合は、例えば「ユーザ企業へのコストへの転換されてしまう」など理由を挙げて説得できる必要があります。

まとめ

 今回の民法改正は、システムの受託開発の基本契約にも影響が出るようなものでした。法務部門のある大企業であれば法改正に対する契約書類の変更はスムーズに行われると思いますが、中小のITベンダでは自ら法改正の内容を理解し対応する必要があります。

 特に、瑕疵担保に関する規定が無く、民法の規定をそのまま適用しているようなベンダ企業は、これからの契約時には何もしないとユーザ有利、ベンダ不利な契約内容に変更されることとなりますので、自社での対応方針を決めたうえで、基本契約に盛り込んだ方が良いでしょう。

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